上場企業の資本政策8つ解説|個人投資家トレーダーが最低限知っておくべきもの
資本政策とは、株式投資をする投資先である企業が資金調達のお金の調達方法などについてです。
増資、自社株買い、立会外分売、売出、株式分割…
証券会社や金融機関に勤めている方や、IPOを目指すベンチャー起業家、上場企業の役員陣などであれば、企業の資本政策ということに馴染みがあるかもしれません。
ですが、私たち個人投資家にとって資本政策というのはわかりにくく、取っ付きにくい印象を受けるでしょう。
ただし、資本政策は、株価や企業の将来の業績に大きく影響を与えるとても重要な企業の施策の一つになります。
また、覚えておくべきものも限られているので、最初は大変かもしれませんが、しっかり理解しておくことで、今後はずっとその知識を使っていくことも可能です。
最後に、オススメ書籍も掲載していますので、そちらも参考にしてください。
株式投資トレーダーが覚えておくべき資本政策
結論から述べると以下の8つです。
- 自社株買い
- 自社株売り
- 立会分売会
- 公募増資
- 第三者割当増資
- 株式分割
- 立会外自社株買い
- 割当による自社株売り
それぞれ一つずつ解説していきますね。
1.自社株買い
最も有名なのは、まずは自社株買いでしょう。
自社株買いとは、市場に流通している株式を企業自体が買うことを意味しています。
企業が自社株買をするメリットとしては、買収防衛、株主還元などが理由になります。
もちろん、会社からキャッシュが減るわけですから、本業に回すお金が必要な成長企業などは、自社株買をすると、成長ドメインへの資金投入ができないので、主にキャッシュ的に余裕がある業績が安定している大企業が行うことが多いです。
ちなみに、自社株買をすると基本的に株価が上昇します。その理由は、以下の二つの理由からです。
- 買い需要が増え、株価上昇
- 期中平均株式総数(発行済株式総数ー自社保有株数)が減るので、1株あたり利益(EPS)が向上し、株価上昇圧力
2.自社株売り
自社株売りは、自社株買の反対です。会社が保有している自社の株式を市場に売却することで、資金調達をすることです。
企業が自社株売りによって資金調達する理由は、設備投資に回したり、借入金の返済による財務体質強化などの資金需要によるものが多いです。
もちろん、自社株買いの反対で、以下の理由で、基本、自社株売りで株価は下落します。
- 売り供給が増え、株価下落
- 期中平均株式総数(発行済株式総数ー自社保有株数)が増えるので、1株あたり利益(EPS)が低下し、株価下落圧力
3.立会外分売
立会外分売とは、取引時間外(9:00-15:00以外)の時間に大株主の株式を広く多くの投資家に向けて売却する取引のことをいいます。
基本的には、立会外分売によって売り出される価格は、直近の終値からディスカウント値引きされた価格で売り出されるので、投資家はお得に買うことができます。
また、立会外分売で株を買う場合、証券会社に支払う取引手数料もかからないのが一般的です。そのため、手数料面でも、市場取引で株を買い付けるよりも、お得に株を購入することができます。
ただし、立会外分売は、マーケットに株が大量に供給されるため、その分売り圧力にもなるので、その分株価の下落の圧力になります。
「大株主の株→大多数の投資家へ」ということで、発行済株式総数に変化はありませんのでEPSへの影響は限定的と言えます。
ですが、一時的にはマイナスになります。
ただし、立会外分売は、東証一部上場の昇格サインでもある場合があります。
東証一部上場を果たすには、ある一定数の株主数が必要です。株主数が規定の数に達していない場合は、大株主が所有している株式を分売にかけて、多くの株主の手に渡るようにすることで、東証一部上場の条件を満たすケースも多いようです。
上場企業からしたら、東証一部へ上場すること、社会的な信用度の向上による企業価値や事業推進にプラスに働きます。
またTOPIX(東証一部株価指数)に自動的に採用されるため、TOPIXに連動したETFや投資信託を運営するファンドによる機械的な買い需要が入るため、一部上場は株価上昇圧力になるので、企業の株主還元にもなります。
そのため、企業としては一部上場は望ましいことです。
このように、立会外分売は、基本的には、一時的には下落圧力になりますが、東証一部上場を目的とした分売の場合は、中長期的には株価の上昇要因にもなるのです。
4.公募増資
公募増資は、広く投資家から公募形式で投資家から資本を受け入れる増資を行うことです。
増資は、株式を発行するので、発行済株式総数が増えます。
そのため、公募増資は一株あたり利益(EPS)が低下するので、株価は下落します。
ですが、投資家から企業に資金が入るので、その資金を元に新たな事業への投資をするなどして、逆に業績を伸ばして、利益を拡大したケースもあります。
そのため、公募増資をする場合、増資の目的やその規模などをチェックすると良いでしょう。
5.第三者割当増資
第三者割当増資は、特定の第三者に対して、株式をあてがい増資を行い資金調達をする手段です。
基本的には、公募増資は広く多くの投資家に対して株式を発行するのに対して、第三者割当増資は、特定の大株主に発行するのが特徴です。
なので、第三者割当増資は、発行済株式総数が増え、一株あたり利益(EPS)が低下するため、株価は低下します。
ですが、第三者割当増資は、公募増資と違って、特定の大株主が所有することになるため、マーケットにその株式は出ないので、実際の需給関係に与える影響は限定的です。
また、第三者割当増資は、業務提携や資本提携などと一緒に発表されるケースが多いので、必ずしも悪いとは言えません。
また、企業に資金が入ってくるので、その資金を使って事業で稼ぐことも可能になります。
債務超過に陥っている企業が資金繰りのために行なうこともあります。
6.株式分割
株式分割は、その名の通り、株式を分割するものです。例えば「1株→2株」のように、実際に発行されている株式を半分にして、発行済株式総数を2倍に増やすことになります。
「1→2」という感じに株式分割が行われると、発行済株式総数が2倍に増えます。すると、株式分割は、一株あたり利益(EPS)が減少するので、その分株価は半分になります。
ただし、投資家が持っている1株は2株になり、100株持っている投資家は200株になるので、結果的に、投資家からしたら持っている株の評価額は変わりません。
ですが、株式分割をすることによって、市場での流動性が上がったり、株価が半分になることで最低投資金額が引き下げられて、多くの投資家の資金流入が見込めるので、その分株価が上がりやすくなります。
ソニーやトヨタといった大企業は、過去に幾度となく、株式分割を行なっています。そうすることで、株価が必要以上に大きくなりすぎないようになり、小口の個人投資家からの買いも入りやすくなります。
7.立会外自社株買い
立会外自社株買いは、自社の株を持っている特定の大株主から自社自身が株を買う取引です。
1.自社株買いと違う点は、一般の自社株買いは、マーケットに出回っている株を買うため、一般投資家の株式を購入することがありますが、立会外自社株買いは、マーケットに買い需要が直接入ることはありません。「大株主→自社」に移動することになるのです。
立会外自社株買いも、自社株買い同様、期中平均株式総数(発行済株式総数ー自社保有株数)が減り、一株あたり利益(EPS)を向上ことになるので、株価の上昇要因にもなります。
8.割当による自社株売り
自社で保有している株を特定の大株主に割り当てる取引です。
基本的には、この売り圧力は、マーケットに出てこないので、市場で株を売る「2.自社株売り」よりは、実際の需給関係に与えるマイナスの影響は限定的です。
ですが、期中平均株式総数(発行済株式総数ー自社保有株数)が増え、一株あたり利益(EPS)を低下することになるで、株価の下落要因にもなります。
こちらも、第三者割当増資と同様に、業務提携や資本提携とセットで発表されることが多いのも特徴ですので、一概に悪いとは言えない場合もあります。
まとめ:オススメ書籍
今回は、投資家が最低限知っておきたい資本政策に関して解説してきました。
正直、初心者の頃、私自身も、資本政策は専門的すぎてアレルギー反応があったものです。
ですが、知識を一つずつ整理していくことで、理解できるようになりました。
実際に私がこの記事を書く際にも参考にした書籍として「最強のファンダメンタル株式投資法」という書籍があります。
ファンダメンタル分析を、わかりやすく体系的にまとめてある書籍なので、資本政策に関してもこちらの書籍からも勉強することが可能です。